「人」が好きな北村だが新人時代は違った。
今では想像できないが声が小さく相手の懐に入っていく術も分からなかった。
「お客様が何を求められているのか全く分からなかった。」と北村は当時を振り替える。
転機はあるお客様にかけられた言葉だった。
いつもと同じようにお客様から様々な要望が出るが新人の北村にはほとんど内容も分からず、ただただうなずくだけしかできない状態が続いた。
少し間があいてお客様から一言。
「言うても分からんわな。また色々注文つけるかもしれんけど懲りずにまた来てくれよ。」
今まで苦手意識のあったお客様からの温かいこの言葉に背中を押された。
相手の良いところを見つけよう。好きになろう。
「好き」という気持ちは必ず相手に伝わると確信している。
まずは自分から相手に歩み寄ってほしい。
なぜ北村はお客様と信頼関係を築けるのか。
それは相手より先に相手を好きになるからだ。
商品のことを知っていてもお客様のことを知らないと売り込めない。
だから北村はどんな時でもお客様のもとを訪問し相手の良いところを探そうとする。
一回で商売が終わることはほとんどなくお付き合いが続いていくお客様が大半だ。
北村は人との関わりを大切にする。
ある日、新規のお客様とどうやってコミュニケーションを取ったら良いのか悩む日々が続いた。
まずはお客様にいかにして顔を覚えてもらえるか。
考え抜いた末に毎週1回お客様のお店の売り場の掃除を行うことに決めた。
初めは驚いていたお客様も訪問していく内に「ウライさん」から「北村さん」と名前で呼んでもらえるようになった。
そのお客様は現在ではウライの主要取引先の1つとなっている。
この喜びがあるから北村は今日もお客様を訪ねる。